無理やりリハビリ
2012年2月13日月曜日
朝の回診が終わってしばらくすると看護師さんが様子を見に来た。
医師に直接聞けば良かったのだが、いつまでこのベットの上で拘束され続けるのか不満だった。
だってそうだろう。ブンブン丸はこれから復活しなければならない。日常生活に支障がない程度?とんでもない。走るためには一刻も早くリハビリを開始して、なまった身体や筋肉を目覚めさせなければならないのだ。ここで寝ているわけにはいかない。
『リハビリはいつからやるの?どうしてやってくれないの?』
『ブンブン丸さんは心臓ですから。しかも緊急だし。そんな簡単にリハビリは開始できませんよ。1週間は絶対安静です。ベットから降りることも許されません。リハビリは一般病棟に移ってからです。みんなそうです。廊下歩いてる患者さんいますか?いないでしょ。ここはCCUですから…』
『寝たままだから身体中が痛くてたまらないよ。床擦れになっているんじゃないかなあ。早くリハビリやってもらわないと身体がどんどん衰退していく。お願いだからリハビリやらせて。やりたいんだよ。』
何度もしつこくしつこくお願いした。
呆れ果てた看護師さんは
『先生に聞いてきます。先生の許可がないとできませんから。』
『少しだけですよ。』
ベットを起こしてくれた。

『早くリハビリやって。』
『ベットを起こすのもリハビリです。体力使うんです。これ以上は先生の許可が出ません。』
もう4日間も食べ物を口にしていない。点滴だけだ。こんな状態が続いていたら体力を回復できない。
午後になって妻が来たので夕飯を食べたいから看護師さんに話してきてと頼んだ。
医師が来て、点滴だけで十分な栄養を補っているから大丈夫と説明されたが、腹ペコなんだと主張して夕食にお粥を出してもらうことになった。ベットを起こして食べるのではなく、椅子に座って食べたいと主張。
ブンブン丸は他の同程度の患者に比べると驚異的な回復力を見せているらしく、医師は渋々了承してくれた。きっと言うことをきかないうるさい患者だと思っているに違いない。
しかし、ベットから降りるのは辛くて痛かった。胸が動くと切断した胸骨と肋骨がずれて強烈な痛みに襲われる。ゆっくりゆっくり支えてもらいながらやっとベットの脇にある椅子に座ることができた。これもリハビリなんだ。
久しぶりの食事は嬉しかったが、自分で食べることはできずにスプーンで口に運んでもらった。
胃がビックリして受けつけけない…食べないと明日から出してもらえないと思ったので一生懸命食べた。見かねたのか、医師が
『最初は少しでいいんですよ。残してください。無理はしないでくださいね。少しずつ食べて胃を慣らせばいいんです。』
3分の1ほどしか食べれなかった。そして気分も悪くなり、ベットに戻った。気分が悪いなんて言ったら明日は降ろしてもらえない。リハビリは禁止になる。勿論そんなことをブンブン丸が言うはずはない。
明日は歩くぞ!
翌朝看護師さんが来て、この部屋のドアまでなら歩いていいと言ってくれた。おそらくたった3mの往復だ。ドアまで行ってブンブン丸はドアを開けた。
『だめですよ。先生に叱られます。』
制止を振り切り廊下に出た。
『先生に聞いてきますから、ここで待っていてください。』
『お隣の部屋までの往復だけ。10mくらいですよ。今日はそれで終わりです。』
『わかった。わかりましたよ。』
しかし、それ以上に歩いた。点滴と血小板の輸血の台を転がしながら、尿袋をぶら下げてゆっくりゆっくり歩いた。
隣の部屋を過ぎてその隣。またその隣。皆んな心臓手術をした患者さんで文句も言わずにおとなしく寝ている様子。ベットを起こしている人すらいない。
(忍耐強い人たちだなあ〜)
そしてまだまだ進んで行った。
『ブンブン丸さ〜ん、もう戻ってください。まったく〜』
看護師さんが呆れた表情でブンブン丸の左側に来た。
『もう少し…お願い。』
ナースセンターの前に来た。
遠目に中を覗いてみたら、ひとりの看護師さんが
『あっ、ブンブン丸さんが歩いてる…』
(叱られちゃうかな?先生もいる)
またひとり
『ホントだ!ブンブンさん歩いてる…』
またひとり…
そして医師も
『ブンブン丸さん…』
どこからともなく拍手が沸き起こった。だんだん大きくなった。
『良かったですね。良かったですね…』
口々に祝福された。皆んなにこやかに笑っていた。とっても優しい表情で…
軽く会釈をしてスマイルで返した。スマイルは、すぐにくしゃくしゃに崩れそうになった。いや、崩れていた。
(ありがとう。ありがとう。皆さんのおかげです。皆さんのおかげで少しずつ元気になれました。ほんとうにありがとうございます。)
4年経った今、あの時の光景を思い浮かべるだけで目頭が熱くなる。
朝の回診が終わってしばらくすると看護師さんが様子を見に来た。
医師に直接聞けば良かったのだが、いつまでこのベットの上で拘束され続けるのか不満だった。
だってそうだろう。ブンブン丸はこれから復活しなければならない。日常生活に支障がない程度?とんでもない。走るためには一刻も早くリハビリを開始して、なまった身体や筋肉を目覚めさせなければならないのだ。ここで寝ているわけにはいかない。
『リハビリはいつからやるの?どうしてやってくれないの?』
『ブンブン丸さんは心臓ですから。しかも緊急だし。そんな簡単にリハビリは開始できませんよ。1週間は絶対安静です。ベットから降りることも許されません。リハビリは一般病棟に移ってからです。みんなそうです。廊下歩いてる患者さんいますか?いないでしょ。ここはCCUですから…』
『寝たままだから身体中が痛くてたまらないよ。床擦れになっているんじゃないかなあ。早くリハビリやってもらわないと身体がどんどん衰退していく。お願いだからリハビリやらせて。やりたいんだよ。』
何度もしつこくしつこくお願いした。
呆れ果てた看護師さんは
『先生に聞いてきます。先生の許可がないとできませんから。』
『少しだけですよ。』
ベットを起こしてくれた。

『早くリハビリやって。』
『ベットを起こすのもリハビリです。体力使うんです。これ以上は先生の許可が出ません。』
もう4日間も食べ物を口にしていない。点滴だけだ。こんな状態が続いていたら体力を回復できない。
午後になって妻が来たので夕飯を食べたいから看護師さんに話してきてと頼んだ。
医師が来て、点滴だけで十分な栄養を補っているから大丈夫と説明されたが、腹ペコなんだと主張して夕食にお粥を出してもらうことになった。ベットを起こして食べるのではなく、椅子に座って食べたいと主張。
ブンブン丸は他の同程度の患者に比べると驚異的な回復力を見せているらしく、医師は渋々了承してくれた。きっと言うことをきかないうるさい患者だと思っているに違いない。
しかし、ベットから降りるのは辛くて痛かった。胸が動くと切断した胸骨と肋骨がずれて強烈な痛みに襲われる。ゆっくりゆっくり支えてもらいながらやっとベットの脇にある椅子に座ることができた。これもリハビリなんだ。
久しぶりの食事は嬉しかったが、自分で食べることはできずにスプーンで口に運んでもらった。
胃がビックリして受けつけけない…食べないと明日から出してもらえないと思ったので一生懸命食べた。見かねたのか、医師が
『最初は少しでいいんですよ。残してください。無理はしないでくださいね。少しずつ食べて胃を慣らせばいいんです。』
3分の1ほどしか食べれなかった。そして気分も悪くなり、ベットに戻った。気分が悪いなんて言ったら明日は降ろしてもらえない。リハビリは禁止になる。勿論そんなことをブンブン丸が言うはずはない。
明日は歩くぞ!
翌朝看護師さんが来て、この部屋のドアまでなら歩いていいと言ってくれた。おそらくたった3mの往復だ。ドアまで行ってブンブン丸はドアを開けた。
『だめですよ。先生に叱られます。』
制止を振り切り廊下に出た。
『先生に聞いてきますから、ここで待っていてください。』
『お隣の部屋までの往復だけ。10mくらいですよ。今日はそれで終わりです。』
『わかった。わかりましたよ。』
しかし、それ以上に歩いた。点滴と血小板の輸血の台を転がしながら、尿袋をぶら下げてゆっくりゆっくり歩いた。
隣の部屋を過ぎてその隣。またその隣。皆んな心臓手術をした患者さんで文句も言わずにおとなしく寝ている様子。ベットを起こしている人すらいない。
(忍耐強い人たちだなあ〜)
そしてまだまだ進んで行った。
『ブンブン丸さ〜ん、もう戻ってください。まったく〜』
看護師さんが呆れた表情でブンブン丸の左側に来た。
『もう少し…お願い。』
ナースセンターの前に来た。
遠目に中を覗いてみたら、ひとりの看護師さんが
『あっ、ブンブン丸さんが歩いてる…』
(叱られちゃうかな?先生もいる)
またひとり
『ホントだ!ブンブンさん歩いてる…』
またひとり…
そして医師も
『ブンブン丸さん…』
どこからともなく拍手が沸き起こった。だんだん大きくなった。
『良かったですね。良かったですね…』
口々に祝福された。皆んなにこやかに笑っていた。とっても優しい表情で…
軽く会釈をしてスマイルで返した。スマイルは、すぐにくしゃくしゃに崩れそうになった。いや、崩れていた。
(ありがとう。ありがとう。皆さんのおかげです。皆さんのおかげで少しずつ元気になれました。ほんとうにありがとうございます。)
4年経った今、あの時の光景を思い浮かべるだけで目頭が熱くなる。
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